賃貸住宅オーナーの税逃れ防止=金取引利用し、消費税の控除悪用―20年度税制改正

Business analysis
賃貸住宅のオーナーが建設・取得時に支払う消費税をめぐり、本来認められていない税の還付が控除ルールを悪用する形で不適切に行われているとして、政府・与党が制度改正を行う方向で最終調整に入ったことが25日、分かった。本業とはまったく関係ない金などの投資商品の取引を繰り返して売上高を増やし、消費税の還付を受ける手口が広がっているため、オーナーに還付されないように改める。
 10月の消費税増税で国民の負担が増える中、抜け道を放置できないと判断。12月にまとめる2020年度税制改正大綱に盛り込む方針だ。
 事業者が消費税を納める場合、売り上げにかかった税額から仕入れ分を控除できる「仕入れ税額控除」という制度がある。しかし、売り上げに相当するマンションやアパートといった居住用の家賃収入が非課税であるため、仕入れに当たる賃貸住宅の建設・取得時の税額を控除できない。
 そこで、金を中心に投資商品の取引を繰り返して、オーナーは売上高をかさ上げ。家賃収入を含む総売上高を増やすとともに、総売上高に占める課税対象売上高の割合を高めることで、還付を受けているという。
 このようなスキームは違法ではないが、政府・与党は消費税の適正な納税を逃れるための抜け道となっていると指摘。こうしたケースを念頭に、居住用賃貸住宅の建設・取得時の仕入れ税額控除を認めない制度をより厳格に運用する。その結果、オーナーは消費税の還付を受けることができなくなるという。 

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5.令和2年度税制改正で賃貸住宅の消費税還付が不可に?

2019年12月12日、令和2年度(2020年度)税制改正大綱が発表されました。今後、賃貸住宅用建物を取得した場合の消費税還付が不可となります。

5-1.令和2年度税制改正

改正内容が複雑なため、要点だけ絞って記載しますと、次のようになります。
1.賃貸住宅用建物の取得時の消費税を計算に含めず、これによる還付を認めない。対象となる建物は高額特定資産(取得金額1,000万円以上の資産)に該当するもので賃貸住宅に使用しないことが明らかな建物の取得を除く。賃貸住宅用かそれ以外の用途は、契約書でなく現況で判断する。
2.令和2年10月1日以降取得する建物に適用される。ただし、令和2年3月末までに契約した建物を除く。
3.なお、消費税の計算に含めない場合、調整計算の期間内に売却した場合、賃貸住宅以外の用途に転向した場合、調整計算に加算する。
4.意見書で事前に公表されていた金取引を利用した消費税還付の規制はない。
3年後の調整計算を回避するために行われていた金地金取引を封じるための税制改正だったはずですが、公表されたものは消費税還付のスキームを禁止するものではなく、賃貸住宅用建物の取得時の消費税還付を一切認めないとする税制改正です。
そのため、課税不動産取得時に支払った消費税を消費税の計算に含めないという新手法が導入されました。賃貸住宅用不動産取引を課税取引としたまま、取得時に支払った消費税を消費税計算に含めないという税制改正です。これにより、賃貸住宅用不動産は、売却時の消費税のみが消費税の計算に含まれて課税され、取得時に支払った消費税は消費税の計算から除外されるというおかしなことが起こるようになります。
なお、3年後の調整計算を行うまでに賃貸住宅用不動産を売却した場合、または、賃貸住宅以外の用途に転用した場合には、賃貸住宅建物取得時に支払った消費税を調整計算に加算し控除します。
やや複雑な説明となりましたが、簡単に述べると、1,000万円以上の賃貸マンション等を購入すると、仕入税額控除ができなくなります。消費税を払っているのに、控除できないのですから、消費税還付もできなくなります。

5-2.令和2年9月末までの取得なら間に合います

ただ、適用時期は、令和2年(2020年)10月1日からですので、令和2年(2020年)9月末までに賃貸住宅用建物を取得する方、または、令和2年(2020年)3月末までに賃貸住宅用建物の取得契約を行う方は、消費税還付を受けることができます。
賃貸住宅用の不動産を取得する方の消費税還付は最後のチャンスです。

消費税還付の手続きはやや複雑ですので、確実に還付が受けられるようにするために、消費税還付に強い税理士にご相談されることをオススメします。
また、すでに消費税還付を受けている方は、今まで通りの手法で3年後の調整計算を回避できます。3年後の調整計算を回避する方法をまだ検討されていない方も税理士事務所にご相談ください。
なお、テナント等の賃貸物件取得の場合は現状と変更なく、消費税の申告方法を工夫すれば消費税の還付が受けられます。

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